歴史と文化が素敵にミックスする街・小浜をe-Bikeで巡り、若狭湾の海の幸に舌鼓!

普段はスペシャライズドのロードバイク「Roubaix」で海岸沿いやエンゼルラインを走りにいくという、アメリカ・メーン州出身のジョシュアさん。

豊かな海の幸を育む若狭湾に恵まれ、飛鳥・奈良時代から朝廷に食材を献上する「御食国」として栄えてきた若狭小浜(福井県小浜市)。若狭湾と京都を最短で結ぶ「鯖街道」や大阪と北海道をつないだ北前船は、海産物・食材などの物資を運んだだけでなく、人々の交流や文化の行き来ももたらしたとか。国宝・重要文化財に指定されている風格ある神社や寺院と、京文化の面影を残す街並みや食文化が、コンパクトなエリアに集約されている。そんな小浜を旅する手段として注目されているのが自転車なんだとか。知的好奇心を満たす文化的なスポットと、おいしいものがいいバランスで共存している……それを自転車で巡るなんて、控えめにいっても最高の予感しかない!

海の幸と絶景が待っている!

ライドの拠点となるのはサイクルスポットでもある「道の駅若狭おばま」。こちらにはe-Bikeのレンタルサービスがあり、誰もが気軽に市内のライドを楽しめるというワケ。今回は小浜と京都の二拠点生活を満喫しているアメリカ人サイクリストで、自転車ツアーのガイドを務めることもあるJoshua Bewig(ジョシュア・ベーウィッグ)さんの案内のもと、e-Bikeに乗って市内の見どころを訪ねてみた。

サイクルステーションにもなっている「道の駅若狭おばま」。名物の「鯖サンド」も見逃せない。

 

 

旧道を走り、小浜屈指のパワースポット、若狭姫神社まで

秋晴れの平日、朝10時。鯖モチーフののれんが印象的な「道の駅若狭おばま」でジョシュアさんと落ち合う。今回のルートは「道の駅若狭おばま」発着で、若狭姫神社や県指定有形文化財のカフェ「GOSHOEN(護松園)」、小浜城址、重要伝統的建造物保存地区の小浜西組といった街並みを周る。途中、穏やかな若狭湾を一望する小浜公園の展望台でハンモック休憩を挟み、若狭湾の海の幸を堪能できる「濱の四季」でランチを取る、というプランだ。

市内で鯖街道の起点を発見。京都まで18里(約70km)!

道の駅を出発して国道の裏手の路地を進む。しばらくいくと、ここが“鯖街道”と呼ばれた丹後街道の旧道であることがわかる。街道沿いには古い社寺や格子窓のある古い民家が連なっているので、自転車の速度を緩めて周囲の街並みを楽しもう。「京都に最も近い、大陸と繋がる日本海の港町」として栄えた当時の賑わいが、目に浮かんでくるようだ。そんな街道の一角にそびえる立派な鳥居は、1300年前(721年)に創建されたという若狭姫神社。正式名称は「若狭彦神社 下社」というが、ここは地元の人にならって「若狭姫神社」と呼んでおこう。一の鳥居をくぐってまず目に入るのが、圧倒的な存在感を誇る古木「千年杉」。樹高30m、幹の周囲は6m。樹齢は500年ほどという。流造り桧皮葺きの本殿との調和が美しく、おもわず見惚れてしまうほど。

手水舎の横にサイクルラックがあるので、ここに自転車を停めてお参り。ご祭神は“乙姫さま”とも呼ばれる豊玉姫命。上社の若狭彦神社とは夫婦の間柄にあり、縁結びのパワースポットとも言われているそう。

 

若狭姫神社の千年杉。

  

里山エリアで古墳を発見!

若狭姫神社を後にして、田んぼが広がるエリアへ。どこまでも広がる田園風景を眺めながら市街へと向かう。かつて遠敷(おにゅう)と呼ばれた若狭姫神社一帯には国府が置かれていたといい、ところどころに小さな古墳が無造作に残っているのがおもしろい。今回は通過してしまったけれど、時間があれば福井県立若狭歴史博物館も立ち寄りたい。田んぼを抜けた先で府中という古い集落に至る。「府中」というくらいだから、国府にまつわる人々が住んでいたのだろうか。大きな石を積んだ石垣の、豪勢な日本家屋が次々と現れる。

府中の集落を走る。

府中を抜け、北川を越えて福井県立大学横の坂道を上る。最大傾斜7%強という坂なのだが、e-Bikeのアシストのおかげでスイスイ上れる。あっという間に折り返し地点となり、快適に坂道を下った。下りきったら最初の休憩ポイント、「GOSHOEN(護松園)」だ。

 

 

庭園が美しい江戸時代の建物で、ひとやすみ

ここはもともと北前船の廻船問屋として栄えた豪商・古河屋が賓客をもてなすために建造した別邸で、小浜の老舗箸メーカー、マツ勘がカフェ&ギャラリーとして蘇らせた。店内にはカフェスペースのほか若狭塗り箸のギャラリーショップ、若狭塗りと古河屋をテーマにした私設ミュージアムを併設している。ジョシュアさんもよく立ち寄るそうで、地元の人の憩いの場になっている。

数奇屋風の造りの「GOSHOEN(護松園)」こと旧古河屋別邸。
邸内は秋田杉ほか全国の銘木がふんだんに使われており、当時の古河屋の勢いをしのばせる。山を借景とした庭園「護松園」を眺めるため、視界の邪魔になる柱を四隅から排したという造りがすごい!

「GOSHOEN(護松園)」からは食祭海道と並行する街道を走る。途中、前日に宿泊した「小浜町家ステイ 西津湊ふるかわ」の前を通り過ぎる。その先で北川を再び渡ると、高い石垣に囲まれた森が見えてきた。小浜城址だ。10mはあろうかという石垣の間の細道を抜けて城址の中へ。江戸時代初期に建てられた小浜城は明治4年の火事で大部分が消失。現在は城郭の石垣が残っているだけだが、天守閣から小浜湾の眺めがいい。

歴史ある町家を一棟貸しの宿泊施設にリノベした「小浜町家ステイ」。現在8棟がラインナップされており、こちらはスイートタイプの「西津湊ふるかわ」。
石垣の間の小道を抜けて小浜城址へ。城址内は押し歩きで。

小浜城址を出て、船溜りの横を抜けて湧水ポイントへ。小浜城のかつての呼び名「雲浜城」にちなんで「雲城水」と呼ばれる名水は、地下30mから湧き出ているもの。この水はくず饅頭やそば、酒など地元の特産品製造に使われているとか。雲城水のあるあたりは各家庭に掘り抜き井戸があるほど地下水に恵まれているらしい。そんな説明を聞きながらボトルに水を汲む間にも、大きなタンクをもった地元の人が続々と水を汲みにやってきていた。

おいしい名水「雲城水」をゲット。

  

 

のんびり楽しむ茶屋町の風情

水を汲んだ後はいよいよ、古い建物が連なるエリアへ。重要伝統的建造物保存地区の小浜西組は、城下町として賑わった江戸時代〜明治時代の名残があちこちに残っている。中でも小浜西組の最西端にある三丁町は、狭い路地にベンガラ格子や出格子の家が連なって、茶屋町らしい風情がたっぷり。鯖街道の先にある京都の花街を連想させるが、京都ほど観光化されておらず、のんびりしたムードを楽しめるのもいい。三丁町からは爆風の吹き荒ぶ海岸線を走り、一気に小浜公園へ。最大風速12m/s、最大傾斜8%強となかなかハードなコンディションだったが、ここもe-Bikeのおかげでらくらく!上りでも汗をかかないので、早めにシェルを着込んでおこう。

ベンガラ塗りの出格子の家が立ち並ぶ三丁町。
海岸線に出た途端、爆風に襲われた。e-Bikeだから問題なし!
小浜公園でハンモック休憩。

 

 

いよいよハイライト!若狭湾を一望する高台の公園へ

小浜湾に面し、海望山の東麓に位置する小浜公園からは、小浜市内をはじめ、内外海・大島の両半島が見渡せる。眺望のいい場所を選んでハンモックを設営。コーヒーやお茶、タイミングが合えば「伊勢屋」の和菓子か、「朽木屋」の焼きサバを買い込んで持参しよう。半時間ほど休憩したら本格的にお腹が空いてきた。大急ぎで坂を下り、小浜漁港に隣接する「濱の四季」に駆け込む。「おばまのイカ丼」に「海鮮丼」に……目移りする!

小浜といえば焼き鯖。こちらは創業260年の鯖専門店「朽木屋」。
迷いに迷って選んだ「小浜ブランド海鮮丼」。ほかにも「若狭ぐじの炙り丼」とか「まはた丼」、「濱盛り海鮮丼激盛」なんてチョイスもあり。

道の駅に戻ってe-Bikeを返却したら、大充実の半日ライドは終了。またすぐ走りにきたい!