諏訪湖畔をぐるりと周回、諏訪大社四社と藤森建築、旧街道の風情漂う下諏訪宿を巡る。

旧中山道のレトロな宿場町を抜けて

諏訪大社下社秋宮から諏訪の町を眺める。

三寒四温というように、初夏のように暖かくなったかと思えば、真冬並みに気温が下がり……を繰り返す春先。あいにくライド当日は3月上旬なみに冷え込んでいて、スタート地点の、諏訪湖畔にある赤砂崎公園には時々風花が舞っていた。今回の諏訪ライドにお誘いしたのは、諏訪大社詣では初めて…という東京の小林卓也さん。愛車のKONA SUTRAを、小さなクルマの荷室に押し込んでやってきてくれた。朝9時、春秋シーズンのグローブを真冬用のものにチェンジし、ウィンドブレーカーを1枚余計に着込んで出発。きっとすぐに暖かくなる、はず!

川沿いはグラベルが楽しい。

初めの立ち寄りスポット、諏訪大社下社春宮までは砥川沿いのグラベルを行く。3kmほど走ればもう春宮だ。春宮から諏訪大社下社秋宮までの1km強は旧中山道を走る。風情ある数寄屋造りの家屋が連なるこの一帯には、中山道中で最大規模を誇った宿場町・下諏訪宿の面影があちこちに。下社の門前町として、さらに甲州街道と中山道が合流する交通の要衝として栄えた歴史を物語るように、中山道沿いに本陣跡や旧道の石碑などが次々に現れる。

古い家屋がちらほら現れる湯田坂を登って。

塩羊羹で有名な「新鶴本店」の前を通過したら、秋宮に到着。中山道の宿場町で温泉が沸いたのは下諏訪宿だけだったが、その中心に位置する秋宮では、境内の手水からも温泉が流れている。冷え切って感覚のなかった指先が生き返った!

旧中山道から旧甲州街道へ、そして諏訪大社へ。歴史の足跡をたどる

お参りした後は旧甲州街道に入り、諏訪湖東岸を南下する。日本橋から下諏訪を結んだ甲州街道も、中山道ほどではないが多くの旅人に歩かれた街道で、江戸時代の面影を残す茶屋、橋本政屋や、「柿䕃山房(しいんさんぼう)」と名付けられた、アララギ派の詩人・島木赤彦の自宅などが現れる。途中、老舗のパン屋「太養パン」に立ち寄って名物のサバサンドを購入しよう。

御柱祭にゆかりのある川越し公園では、北アルプスと八ヶ岳、2つの山脈を見渡すことができる。
諏訪といえばこれ!「太養パン」名物のサバサンド。

諏訪大社上社詣での前に、諏訪湖から流れる上川と宮川を渡って川越し公園でランチブレイク。この「川越し」はもちろん、御柱の川越しのこと。木落しが終わったら、御柱はこの宮川を渡るのだが、これを川越しといい、御柱を里へと運び出す「山出し」最後の見せ場になる。御柱祭の川越しの会場となるのがこの公園らしい。よく整備された芝生の公園からは八ヶ岳も北アルプスも見渡せた。折り畳み式のテーブルを出し、ピクニック気分でサバサンドをいただく。

こちらは上社前宮。社の左手に見えるのが、上社最大の神事、御頭祭が行われる十間廊(じゅっけんろう)。毎年4月15日に行われる。タイミングが合えばぜひ、参加したい。

秋宮を出発して12kmほどで上社前宮に到着。前宮は諏訪信仰発祥の地と言われる、高台に位置する神社で、4本全ての御柱を間近にできるのはこの前宮だけ。明治維新まで諏訪大社の神職の最高位で、現人神として信仰されてきた「大祝(おおほうり)」が拠点としていた場所であり、御頭祭(おんとうさい)などアニミズムの色濃い遺構や祭礼が残されていておもしろい。ここでは、自転車を押しながらのんびり散策しよう。山の上から「水眼(すいが)の清流」と呼ばれる小川が流れていて、のどかな空気が流れている。

諏訪を代表する名物建築群へ

ユニークな茶室、「高過庵」と「空飛ぶ泥舟」を眺めながら。

前宮を後にしたら、藤森建築を眺めながら本宮方面へ。御頭祭を再現している神長官守矢史料館はあいにくの休館日だったので、「高過庵(たかすぎあん)」、「低過庵(ひくすぎあん)」、「空飛ぶ泥舟」を外から鑑賞。この集落出身の、建築家&建築史家・藤森照信さんの名前を世界的に知らしめた代表作は、まるでおとぎ話にでてくるような不思議な茶室で、諏訪という土地の風情にぴったりマッチしているのである。

足湯にほっこり

諏訪湖から天竜川へ流れ出る水量を調整する釜口水門。歩行者と自転車は水門の上の通行が可能。

続く本宮は、参道に茶店などもあるからか、もっとも賑わっていた。本宮から水路横のダートを走って再び諏訪湖へ。2kmちょっとのナイスダート!諏訪湖に出たらサインクリングロードをひたすら北上する。諏訪湖を一周するように設けられた全16kmのサイクリングロード、昨年春に全線開通したばかり。Eバイクのレンタルなどもあり、今後、サイクリストが増えそうだ。釜口水門を通って諏訪湖の北岸をしばらく走り、岡谷温泉の足湯にピットイン!足先をつけただけなのに全身がぽかぽかになって、温泉パワーを体感する。無料というのが申し訳ないほど湖畔の眺めもよく、時間を忘れて堪能できる。時間があれば足湯の裏手にある諏訪湖ハイツの温泉に入るもよし、下諏訪の街中の共同浴場まで足を延ばしてもいい。

ほのかな硫黄臭が漂う足湯。湯上がり後はすべすべ。

足湯から赤砂崎公園までは1km弱。ぽかぽかの足先が冷えるまえに帰りましょう。