グラベル&ダートをつないで走る! 1泊2日の週末自転車旅は、旬の食材満載の美食も楽しみ。

同じ長野県にありつつ、白馬・安曇野エリアや北信エリアに比べると地味な印象を拭えない南信・伊那谷エリア。実はこのエリアは、知られざるグラベル&ダートの宝庫。林道や農道、廃道になったトレイルなどを利用すれば、東京近郊では味わえないグラベルライドを満喫できる!このルートでは伊那市中心部を出発して飯島町にあるキャンプ場で一泊し、帰りは往路とは別のルートでスタート地点に戻ってくる。周遊コースで、トータルはおよそ82km。テントや寝具、クッカーを自転車に積みこむガチなバイクパッキングもいいけれど、今回は宿泊と食事は施設を利用して、身軽&気軽にファンライドを楽しんでみよう。オフロードビギナーも楽しめるファンライドへ出発!

グラベルも楽しめる、1泊2日のファンライドへ!

伊那市から宮田村を抜けて駒ヶ根市へ、川沿いを走る。

このコースを走ってくれるサイクリストは、岐阜県からやってきたユリさん&タクマさん夫妻。伊那市の体験ライドで自転車にハマったという2人の自転車歴は1年足らずながら、自転車購入からわずか半年でOMM LITEに参戦したという強心臓の持ち主だ。集合場所の伊那バスターミナルを出発したら、まずは街を貫く天竜川を渡り川沿いに南下、そこから三峰川の土手沿いのロードを進む。天気がよければ正面に南アルプスの仙丈ヶ岳を望むけれど、今日は雲のなかに隠れている。この後しばらくは田園地帯のなかを、舗装道を基調に走る。

小さな赤い吊り橋が、このエリアのランドマーク。

16kmほど走ると再び天竜川沿いの道に合流する。北の城橋という赤い吊り橋を横目に川沿いの道を上ったりくだったり。橋の周りにカッパの銅像が見えてきたら、その昔カッパが棲んでいたという伝説が残る駒ヶ根市だ。「かっぱふれあいセンター」という直売所で小休憩。そこから3kmほど進めば、待望のランチスポット!2024年春にオープンした「三毛猫とキツツキ」は、サイクリストフレンドリーなカフェ。菜園を営むオーナー夫妻が、自家栽培した野菜もしくは伊那谷産の旬野菜をキッシュやパスタに仕立てて提供している。伊那谷の蕎麦粉を使った、季節ごとのパスタをぜひお試しあれ。

季節ごとに彩り豊かなプレートを楽しめる「三毛猫とキツツキ」。

ゴールは池を取り囲む小さなキャンプ場

ランチを終えたらいよいよ本日の後半戦、上りのパートへ。絶景や風情のある橋、気持ちのいい下り坂といっためぼしいイベントもなく、だらだらと上る舗装道に、「メンタルが削られるねー」とユリさん。もともと山登りが趣味で、現在は週末ごとにロングライドやサイクルトリップに出かけているという2人、足腰も気持ちも強いのだが、この上りは「メンタルトレーニングになった!」(タクマさん)。

そんな二人を待ち構えていたのが、千人塚公園直前の登り坂!標高差200mの坂道はのんびり、ゆっくり、自分のペースで進もう。途中、三州街道の石畳&グラベルの旧道の分岐があるので、グラベル仕様のバイクであればそちらを選んでも。旧道ではアドベンチャー感のあるオフロードを楽しめる。

1日目の最後に待ち構える舗装道の上り。

1日目のゴール、千人塚公園に到着。公園内には城ヶ池という大きなため池と、その周囲にキャンプ場やグランピング施設、「yado櫻山」という宿泊&レストラン棟がある。ため池ではオイカワやコイの釣りやSUPも楽しめるから、自転車と組み合わせてハイブリッドな遊びも可能だ。池の周囲は自転車も乗り入れられる遊歩道になっていて、秋には紅葉が美しい。

本日はキャンプインではなく、「yado櫻山」に宿泊。池を見晴らすダイニングでディナー。

1日目の締めくくりは、「yado櫻山」でのディナー。シェフ宮下広和さんが腕を振るうコース仕立てのディナーには、地元で獲れた鹿肉や飯島町で養殖しているアルプスサーモン、和製ポルチーニと呼ばれるヤマドリダケモドキなど、その季節ときどきの地物がふんだんに。長野のシードルやワインなど、フードとのドリンクペアリングもオーダー可能だ。

旬の地物食材を楽しめるコース仕立てのディナー。

そんな大充実の1日を終え、明日の抱負は?「上りで強い心をもつ!」(ユリさん)。
大丈夫、明日は下り基調です!

快適な林道下り、途中で川遊びのお楽しみも

2日目は朝9時に千人塚公園を出発。快晴のこの日、気温はすでに26度!酷暑の予感に怯えながらペダルを踏む。千人塚公園の前の道を西側、つまり山側に進むと、舗装道はいつしかダートに変わっていた。一気に150mほどを上ったら、その先は快適な下り坂だ。標高差200mほどを一気に降る。

この日もいい天気!湖畔を散策してからライドへ。

林道を下った先には絵葉書のように美しい里山が広がっていた。田んぼでは稲が金色に輝き、白いそばの花が揺れ、金色と白が入り混じった段々畑はストライプのタペストリーのよう。高速道路の高架橋を行ったり来たりしているうちに駒ヶ根市に入り、周囲の趣は里山から山岳リゾートのそれへ変わる。


光前寺という古刹を通り過ぎると現れるのが大沼湖。湖の東側では中央アルプス、西側では南アルプスの姿を楽しめるという人口湖は、冬はフクジュソウ、春先にザゼンソウとミズバショウ、初夏のアヤメ、秋の紅葉と、四季折々の草花が楽しめる観光スポットだ。池の周りのグラベルをのんびり走ったら、駒ヶ根屈指の人気スポット、こまくさ橋へ。

林道の脇に小川を見つけて水遊び。
登山客で賑わうこまくさ橋を渡る。

中央アルプス・木曽駒ヶ岳の麓で山岳リゾートのムードを

登山客で賑わうこまくさ橋の先に、2日間のハイライトともいうべきお楽しみポイントが待っている。それが、林の中を流れる小川に沿って設けられた自然歩道「こまくさの径」だ。全長1.7kmほどのグラベルなのだが、適度に整備されたオフロードは走りやすいうえスピードにも乗れ、これが最高に楽しい!その先にいくつか現れるダートのポイントを抜けると、目の前にはいつしか見慣れた天竜川と市街地の風景が。周囲を見回すと、前日には姿を見せなかった南アルプスの仙丈ヶ岳と甲斐駒ヶ岳が、くっきりと山容をのぞかせてくれた。

絵葉書のように美しい里山。

2日間のライドを振り返って、「2つのアルプスもいいけれど、昔ながらの里山の風景が心に残っています。自宅の周りの田んぼや畑は、すっかり住宅街に変わってしまったから。日本の原風景って感じ!」とユリさん。「轍のあるグラベルが楽しかった!岐阜ではロードがメインになってしまうから、またグラベルを走りにきたい!」とタクマさん。いつでもお待ちしています!