のどかなグラベルを走り、伊那谷を一望する眺望ポイントへ。締めはサイクリスト御用達の餃子定食で。

スタートは伊那バスターミナル。関東からやってきたアズマさん&AYANENさんと落ち合う。

いやあ、暑い。現在朝9時、気温はどんどん上がっていく。もっと早い時間にスタートするべきだった……と後悔しながら、集合場所の伊那バスターミナルに向かう。今回のルートは伊那谷の谷地形を一望する上ノ平城跡に立ち寄った後、南信のサイクリスト御用達の名物餃子店でランチしよう!というもので、サイクリストは関東在住のアズマさん&AYANENさんの2人。AYANENさんは安曇野ライドに続き2回目の登場だが、グラベルライドはそのとき以来。一方、相棒のアズマさんは地元の札幌から東京まで、ロードバイクとフェリーで旅したことがあるそうだが、グラベル経験はほぼ皆無。梅雨明けの酷暑のなか、果たして2人はオフロードを満喫できるだろうか。

国道を避けて裏道、裏道を行く。写真ではわかりづらいけれど、 “伊那谷”という通り、谷地形を感じさせるアップダウンが続く。

田んぼの脇のグラベルを行く

伊那バスターミナルから通り町商店街を経て、153号に至る。クルマの往来を避けて裏道に入り、そのままゆるやかな坂道を登る。しばらく走ると見晴らしののいい田園地帯に突入する。稲が大きく育った田んぼは一面が濃いグリーンに覆われ、青空とのコントラストが爽やかだ。ここでさっそく、オフロードの登場!AYANENさんは前回と同じバイク、KONA DEW、アズマさんはKONA SUTRA LTDで田んぼの間に設けられているダートを軽快に走る。

「この未舗装動の感じ、久しぶり!」(AYANENさん)

「YouTubeでグラベルライドというジャンルがあることを知って興味があったのだけれど、自宅の周りには未舗装道がなくて……。初グラベル、ちょっとうれしいな」(アズマさん)

田んぼゾーンではフラットなグラベルを走る。

木陰のない田んぼゾーンの暑さに辟易し、コンビニにピットイン。このルートで唯一のコンビニで、もう一度、入念な日焼け対策を。誰しも日焼け後にだるさや疲労を感じたことがあると思うが、あれは汗をかくことで体内の水分が不足してしまうのと、紫外線による活性酸素の増加が招くものだ。というわけで、パフォーマンス維持のためにも水分補給と紫外線対策をしっかりと。目からの紫外線ダメージを防ぐため、サングラスをかけ、ライド中に日焼けしやすい首まわりはネックゲイターやネッククーラーでケア。水で濡らすと紫外線対策をしながら気化熱を利用した体温調節も行えて快適なのだ。そうそう、熱中症気味?と感じたら、太い動脈が走っている首、脇の下、鼠蹊部を冷やすと、体内に冷たい血液が巡って効率よく体温を下げられる。「首を冷やす」というとうなじを冷やす人が多いが、うなじよりも頸動脈(喉の左右の、脈を感じる部分)を冷やすのがいい。

まるで映画のワンシーン!古い水路橋を渡って

レトロな風情がなんとも絵になる、「八乙女の水路橋」。

コンビニを出発後は、果樹園の間の道を通りながら箕輪町の水路橋を目指す。昭和3年に完成した「八乙女の水路橋」は近代土木遺産として知られる建築物で、古びた石造りの外観がインパクト大。地域の人々の生活道路として使われているものだが、老朽化が進んでいるため、現在は歩行者と自転車のみが通行可能。水路橋を渡って水田地帯に降りると、川沿いのダート区間に差し掛かる。木陰があり、川のおかげでぐっと涼しいこの区間で、ちょっとだけブレイク。

「八乙女の水路橋」でひと休み。

ダートの先で国道に出て線路を越え、天竜川を渡る。いよいよ、このルートのハイライト、上ノ平城跡に至る登り坂だ。前半は2、3%程度のなだらかな傾斜だが、上の平城址が近づくにつれ、その傾斜はきつくなっていく。安曇野ではフラット基調のルートを難なくこなしたAYANENさんでも、ここはやや辛そう。暑さもあるので無理をせず、休憩をはさみながらのんびりと坂の上を目指す。

ハイライトは、伊那谷を一望する上ノ平城跡

大パノラマが広がる上ノ平城跡。登ってきた甲斐あり!

平安時代に伊那源氏が築城したとされる上ノ平城跡は、よく整備された芝生広場が広がる、地域の人々の憩いの場。標高760mにある広場からは伊那谷の町並みと、南・中央アルプスを一望できる。大汗をかきながら登った先に、この大パノラマ!これはちょっとしたご褒美といえるだろう。いつもなら芝生に寝転がって休憩するのだが、今日は広場に隣接する東屋の下に避難。水分をとって行動食を補給し、ルート後半に備えよう。

後半のルートをチェック。次の休憩ポイントは……?

30分ほど休憩した後、装備を整えて出発。上ノ平城跡から4KMほどは快適なくだりが続く。春先や秋口のライドでは下りが始まる前にウエアリングの調整を行いたいところだ。この区間の道は木陰があって適度に舗装されており、登りとは打って変わって楽しく駆け抜けられる。「やっぱり夏場はハイクよりも断然、バイクがいいかも!」(AYANENさん)。

GPSをきちんとチェックしていないAYANENさんは知らなかったのだ。この先に怒涛の登りが待っていることを…… 。

登ったり、下ったり。

快適な下りが終わり、間もなくして(25km過ぎ)再びの登り坂に突入。最大斜度9%程度だが、登って下ってが8km近く続く。これには、トレイルランニングでメンタルを鍛えているAYANENさんもややげんなり。おまけに、大量に汗をかいたせいか、脚がつるというトラブルに見舞われる。

「つる(有痛性筋痙攣)」とは、筋肉が縮み過ぎて元に戻らなくなる症状のこと。運動中の筋痙攣は、運動中に大量に汗をかき、水分とともに体内のミネラル量が減ってしまうことが原因らしい。「つりそう」と感じたら、まずは水分(と、できればミネラル)を。さらに、軽いストレッチで筋肉をほぐそう。数分休めば痛みも治まるはずだ。

「もうすぐ餃子だよ!」というアズマさんの励ましもあって、どうにか「らでん」に辿り着いた。

坂を上ったさきに、お待ちかねの餃子タイム!

住宅の立ち並ぶ一角にある「らでん」。小さな看板を辿って。
これが噂の餃子定食。自家製小鉢もイケてる!

こんなところに食事処が?というようなロケーションにぽつんと現れる「らでん」は、餃子がメインの定食店。もっちりとした厚めの皮と肉汁たっぷりのジューシーな餡の餃子で、この界隈のサイクリストから圧倒的に支持されている。季節野菜を使った自家製の副菜3品と豚汁も、それぞれメインを張れるほどのクオリティ。だからここはぜひ、「餃子定食」をオーダーしたい。「大汗をかきながら自転車に乗って餃子を食べにくるって、夏休みの子どもみたいでいいよね(笑)」(アズマさん)。「まさか坂の上にこんな素敵なごはん屋さんがあるなんて思わなかった!」(AYANENさん)と、2人とも大満足の「餃子定食」だった。

昼食後は「らでん」の近所の鳥の宮湧水で水を汲み、ゴール地点を目指す。残り約10km、緩やかな下りをのんびり進み、再び天竜川を渡ったらゴールは目前だ。

給水ポイントの鳥の宮湧水。
冷たい湧水に癒される。

初めてのグラベルバイク&グラベルライドを体験したアズマさん、「アウトドアが好きな僕には、ロードバイクよりもグラベルバイクのスタイルがフィットするように思いました!」と感触は上々。普段乗っているロードバイクでは到底走れないようなワイルドなダートを、ぐんぐん走破する頼もしさに共感したようだ。

「『もう2度と自転車には乗らない!』「って心に決めるくらい、登りが辛かった」とは、AYANENさん。「でも、あんなに辛いのに下りになると楽しくって、辛いことを全部忘れちゃう。自転車って不思議な乗り物ですね」。

AYANENさんがチョイスしたのは、安曇野ライドにも登場したKONA DEW。
アズマさんは、KONA SUTRA LTDをチョイス。

「坂はなかなかでしたけれど、あの餃子が待っているなら何度でもチャレンジしたいかな」(アズマさん)。暑いなか、おつかれさまでした!また餃子を食べに、走りに行きましょう。